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2015年3月24日火曜日

映画『イミテーション・ゲーム』と『エニグマ』、ミステリー『針の眼』


ベネデイクト・カンバーバッチ主演の話題作、『イミテーション・ゲーム』 ~Imitation Game


Photo by 『イミテーション・ゲーム』 face book





ドイツの電気機械式暗号機、「エニグマ」の暗号を解読せよ!が主軸のストーリーではなく、あくまでも数学者アラン・チューリングの人となり、内面を描いている映画です。

アラン・チューリングはケンブリッジ大学の数学者で、ロンドン北部のブレッチリーパーク「政府暗号センター」(Government code and Cypher school)にて「bombe」と呼ばれる暗号解読機を制作、総当たり攻撃によりエニグマの暗号解読に成功します。

実際は、暗号解読には開戦前にポーランド軍の暗号解読機関から受け取った旧式のエニグマのレプリカや資料(解読方法も含む)をもとに仕組みを解析したそうですが、その辺には(詳しくなりすぎるためなのか?)触れられていません。

解読もチューリング博士だけでなく、他に多くの優秀な数学者たちが関わっていますが、そちらも省略(あくまでも主役はチューリング博士です)。


暗号解読の詳細を語る映画ではなく、人間、アラン・チューリングの描写が主軸となっており、もちろん社会性のない天才をやらせたらベネデイクト・カンバーバッチは抜きん出ているのですが、如何せん、(『シャーロック』のファンなので)社会性のない天才=シャーロックの役柄にどうしても結びつけてしまい、困ります。

シャーロックほどには傲慢な部分はないのですが、誰にも理解しがたい天才の鋭い部分を強調したらシャーロックになってしまう・・・。ので、やりにくいところもあったのではという印象を受けました。


そして、下記のような数々の特異なエピソードを持つアラン・チューリングの変人ぶりや優秀さをもっと強烈に表現してほしかった気がします。


チューリングは長距離走が得意だったらしく、会議に出席するために、ブレッチリーパークからロンドンまでの64kmの距離を走ったことがある。(⇒ランニングしているシーンは挿入されていたが、何かを忘れるためにがむしゃらに走っているように見えました)
花粉症のため、自転車に乗る際にはガスマスクを装着していた。(⇒当時のロンドンでは、防毒マスクをしゃれたバッグにいれて持ち歩いている女性たちがいたそうなので、マスクの所持はごく普通のことのようです)
マグカップの盗難を防ぐため、ラジエーターに鎖で繋いでいた。


ホモセクシャルであることは、彼の死に係わる重要な要素ですが、その辺りはパブリックスクール時代のエピソードで切なく描かれています。少年時代のアラン・チューリング役の演技は素晴らしく、ベネデイクト・カンバーバッチ以上に"アラン・チューリング"を感じました。



Photo by Karsten Sperling http://spiff.de/photo


世間の評価はかなり高く、映画評などでも☆☆☆☆☆が5個並んでいます。




そして2003年の映画 『エニグマ』 ~ENIGMA


もっとエニグマを楽しみたい方にお薦めなのが、ケイト・ウインスレット出演、マシュー・マクファディンが海軍の情報将校役で出演している『エニグマ』です。







恋人のクレアにふられて精神を病んだケンブリッジ大学の数学者トム・ジェリコがブレッチリーパークの仕事に復帰する。
しかし、クレアは謎の失踪をとげ、彼女の部屋から受信された暗号文を発見したジェリコは、彼女がドイツのスパイなのではないかと疑う。
クレアのルームメイトだったヘスター(ケイト・ウインスレット)の協力を得て、ジェリコはクレアの行方と彼女の真実の姿を探り出そうとする。

同時にジェリコは北大西洋上の味方の船団をUボートの攻撃から救うため、「シャーク」というエニグマ暗号機をより発展させた暗号機の暗号を解読する任務を与えられる。
気象暗号をもとに前回は解読したが、2日前にドイツは気象暗号を変更してしまっていたことから、ブレッチリーパーク内にドイツのスパイがいると推測された。
この暗号を解読するためには、船団の船が発見され、ドイツが無線でその位置や速度を通信し、その通信の暗号受信してをひとつずつ解読していくしかなく、連合軍側の船の犠牲を意味することでもあった。

一方、クレアが隠していた暗号をエニグマ機で解読すると、ポーランド人の名前が連なった名簿であることが判明し、映画の冒頭にソ連のカティンの森で発見された4000体の死体の山へと謎はつながっていく・・・。



暗号コードの謎、美しい女性の失踪の謎を織り交ぜたエンターテイメント性の高い、サスペンス映画です。ブレッチリーパークの雰囲気はこちらの映画の方がわかりやすいかも。

ケイト・ウインスレットはメガネ女子、マシュー・マクファディンは隻眼の情報将校でカッコいい!


2003年頃のマシュー・マクファディン




制作に係わったミック・ジャガーとケイト・ウインスレット







スパイ小説 『針の眼』 ~ EYE OF THE NEEDLE   ケン・フォレット著



『イミテーション・ゲーム』、『エニグマ』を観たら、更に第二次世界大戦当時の雰囲気を存分に味わえる、連合軍のノルマンディー上陸作戦に絡むスパイ・サスペンスもの、『針の眼』を思い出しました。










ケン・フォレットの出世作である『針の眼』はドナルド・サザーランド主演で映画にもなっています。
スリーパー・エージェントとしてイギリスに潜んでいたヒトラーの信望も厚いドイツのスパイであるヘンリーが、連合国軍のフランス、カレーへの上陸作戦が欺瞞であることを見破り、本国へ情報を届けるためにたどり着いた北海の孤島で、車椅子生活を送る夫と心が通わなくなっていたルーシーという魅力的な女性に出会い、運命が大きく変転してしまう・・・というストーリー。

スパイものは複雑に入り組んでいる作品が多いのですが、この『針の眼』は読みやすく、スパイものが好きならお薦めです!


ルーシーの若き夫、自動車事故で肢体不自由となったケンブリッジ大学出身の元英国空軍のパイロット、デービッドは睫毛が長くキレイな目もとをしており、男装の女性に見紛うばかり・・・とあるので、エディ・レッドメインEddie Redmayne をイメージしてしまいます。



エディ・レッドメイン 2014年12月  "女性に見紛うばかり・・・"

2015年3月8日日曜日

『Lewis』 オックスフォードミステリールイス警部 最新シーズン8

オックスフォードミステリールイス警部 最新シーズン8、『Lewis』がちょっぴり変化して登場しました!







『主任モース警部』のスピンオフとして始まった『ルイス警部』
『主任モース警部』はコリン・デクスター原作で、一筋縄ではいかないモース警部のお話は謎解きに色々な引用やパズル的な要素が多く盛り込まれ、少々敷居が高いのですが、『ルイス警部』はモース警部に敬意を表しつつ、オックスフォードもたっぷり詰め込んでエンターテイメント性をより高くしたドラマです。
イギリスでも人気が高く、2012年(シーズン7)に"これが最後のシーズンになるだろう"と発表されていたようですが、(シーズン7の最後のエピソードでは"引退するよ・・・"というルイス警部に対して"私も一緒に引退します"としょんぼりするハサウェイ巡査部長という感じで少々寂しい終わり方でした)、第9シーズンまでの制作が予定されているようなので、少なくともあと1シーズンは観ることができます。


第8シーズンでは、主役のはずの"ルイス警部"が引退後・・・趣味のカヌー作りに勤しんでいると、イノセント警視正から「人手不足のため捜査を手伝ってほしい」という連絡が入り、ルイス警部はカヌー作りをちゃっかり投げ出して現場に戻ります。
第7シーズンでは"私も引退します・・・"と悲しそうなハサウェイ巡査部長でしたが、無事にルイス警部のあとを引き継いで"ハサウェイ警部"に昇格。しかし、他人に捜査を任せきれず、肩に力が入りすぎているハサウェイ。そんなハサウェイのために、ガス抜きも兼ねてルイス警部が帰ってきたのでしょうか。

しかし、ハサウェイ警部はルイス警部を尊敬し、慕っているので彼のリターンが嬉しい反面、捜査をリードするのは自分であるという自負があるのでかなり複雑な心理状態となっているようです。
また、ルイス警部もついついリードをとってしまいそうになるので、自分を抑えるのが大変そうです・・・。

ルイス警部からにじみ出る"安定した人柄の良さ"が物語の基盤を明るいものにしていたのだと思いますが、今シーズンではハサウェイ警部に焦点が当たっているので、若干暗めの印象を受けます。




ルイス警部役のケヴィン・ウェイトリー




モース警部と若き日のルイス警部






第8シーズンで最も印象的 なのはエピソード3『善悪の彼岸』  Beyond Good and Evil。
13年前に起きた3人の警察官殺害事件で医療刑務所に収容されていた殺人犯のローリーが、DNAの科学捜査ミスや供述書の未提出により、控訴審が行われ、釈放されてしまいます。
同時に制服警官が13年前と同じ手口で殺害され、巡査部長のマドックスも襲われて意識不明になり、コピーキャットなのかあるいは真犯人は他にいるのではないかとの疑いが出てきます。
ローリーを逮捕したルイス警部は絶対の自信を持っていますが、対するハサウェイはニュートラルな視線で事件をとらえ、ローリーが無実である可能性も探ります。

これは以前に紹介したミステリー、ヨルン・リーエル・ホルスト作の『猟犬』と似ている設定ですが、過去の事件の裁判結果が覆され、あきらかに有罪と思われた犯人が釈放されることは、警察にとって最悪の悪夢。きっと、賠償金も要求されたり、自伝も出されたりするのでしょう・・・。

結局、釈放されたローリーは、けんもほろろに突き放した共犯者の女性に殺され、ローリーがやはり有罪であったことも証明されて、ルイス警部とハサウェイ警部の捜査は終了します。




ハサウェイ警部役のローレンス・フォックス




ローレンス・フォックスの奥さまはビリー・パイパー。『Doctor Who』のローズです。
結婚式にデイヴィッド・テナントが出席しています。









デヴィッド・テナントです。  ワインカラーの装い





にこやかな笑顔のルイス警部、ケヴィン・ウェイトリーも出席 ドラマの姿と変わらないのが嬉しい♡