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2015年1月25日日曜日

『HANNIBAL』 Season 3予告編とマッツ・ミケルセン            Mads Mikkelsen♡



2015年の夏、『HANNIBAL』 Season3 が始まります。


日本はまだシーズン1のDVDレンタルまでこぎつけたばかりですので、気が早いのですが。
シーズン3のオープニングでは、ハンニバルはDr.ベディリア(Bedelia)とヨーロッパに滞在し、新たな被害者をハンティングしているようです。そしてウィルが彼の弟子にならないことに傷ついているハンニバル。












こちらが予告編。
ハンニバル(マッツ)のレザージャケット姿が嬉しいです。前髪もおろしているので、とってもナチュラルなマッツを見ることができます♡

ウィルがハンニバルに「許すよ」と言っています・・・。






























そして、シーズン3ではフランシス・ダラハイド役でリチャード・アーミテイジが出演することに!
"Tooth Fairy"と呼ばれる、人間を噛み切って殺すシリアルキラーです。

原作にも出てきた殺人鬼で、このドラマが原作の『ハンニバル・ライジング』『レッド・ドラゴン』などから忠実にエピソードを制作しているのがうかがえます。





リチャード・アーミテイジは映画『ホビット』の出演で有名ですが、私にとっては『MI5』のルーカス・ノース。
それにしても、ウィル(ヒュー・ダンシー)はイギリス人、ハンニバル(マッツ・ミケルセン)はデンマーク人、リチャードもイギリス人。アメリカのドラマで、アメリカのミステリーが原作ですが、自由な発想でドラマの世界を膨らませていく制作陣を尊敬してしまいます。







All photos by HANNIBAL Facebook



マッツ・ミケルセンの主演ドラマでお薦めなのが、『UNIT ONE』
デンマークのドラマで、シーズン4まで制作されています。
DVDがAMAZON.UKで英語字幕ありで販売されているので、パソコンなどでヨーロッパのDVD
を見ることができるなら、たっぷりとマッツ・ミケルセンを楽しめます!

マッツ・ミケルセンはレザージャケットを愛用する、ちょっぴりはみ出している刑事の役。
結婚して息子もいますが、つい他の女性と関係を持ち離婚、最終シーズンでは刑務所に半年間も囚人としてもぐりこみ、潜入捜査を行っています。
お話は、①事件が起きる②証拠をつかむ③容疑者を捜索・・・という感じに進行して妙なトリックもなく、シンプルに流れていき、英語字幕も簡単です。
『HANNIBAL』では見られない笑顔や自然な仕草が嬉しいドラマです☆彡




『強襲』 ~GAMBLE  新・競馬シリーズを応援します!


Horse Racing photo by Paul https://www.flickr.com/photos/vegaseddie/




日本で"競馬" といったら、競馬新聞片手にオジサン連中が一喜一憂しているギャンブル…というイメージしか湧かないのですが、UKでは違います。確かにギャンブルですが、もっとスポーツに近いもの。

ディック・フランシスの"競馬シリーズ" ミステリーは、私にとってシャーロック・ホームズやアガサ・クリスティを読み終えた後にたどり着いた最初の海外ミステリー。

コナン・ドイルやクリスティはミステリーの教科書的存在なので、その先のステップをなぜディック・フランシスに踏み出したのかは「?」なんですが(たぶん凄く流行っていたのだと思います)、『大穴』『興奮』『利き腕』などなど、夢中になって読んでいました。

けれどもディック・フランシスの高齢化に伴い、物語の勢いがなくなっていき、最近まではご無沙汰していました。フランシスの息子さんとの共著が出版されているのは知っていたのですが、過去の作品の良さを知っているからこそ、手が出ませんでした。

そして2012年にディック・フランシスが亡くなり、(R.I.P.)、その後に次男のフェリックス・フランシスが出した"新・競馬シリーズ"、『強襲』 ~GAMBLE です。










本屋で見かけて、訳者の後書きに「本書が売れてくれれば、この"新・競馬シリーズ"が続けて翻訳されることもあり得るだろう」と書かれていたので、応援の意味を込めて購入しました。
・・・「翻訳ミステリーを取り巻く状況は厳しいので・・・」とも書かれてあり、そういえば最近海外ミステリーの棚が狭くなっているので、海外ミステリーファンとしてはちょっぴり危機感を感じます・・・

内容はまさにディック・フランシス風をそのまま踏襲した文体で、主人公はストイックな元競馬騎手であるファイナンシャル・アドバイザーのニコラス・フォクストン
グランドナショナル観戦中の彼の真横で同僚が射殺される。
フォクストンはこの同僚のインターネット・ギャンブルの借金返済に遺言執行者として頭を悩ませつつ、顧客の陸軍大佐から投資先のブルガリア土地開発の詐欺に関する相談を持ち込まれて調査していくうちに、さまざまな事件に巻き込まれていき、恋人や母親とともに暗殺者に命を狙われてしまう・・・というストーリーです。

同棲中の恋人の心変わりを疑ったり、年上の魅力的な調教師の女性から誘惑されたりとロマンスの方面でも頑張っています。

これはパスティーシュではなく、フランシス家の「ファミリー・ビジネス」。
なので、どこも変える必要はないのですが、どこまでもストイックに押しまくる主人公だけでなく、例えば個性豊かな女性警察官、検察官、検視医等々・・・を登場させればもっとひねりが加わっていいかもしれません。
最近のミステリー・ドラマでは強烈な個性の女性刑事が活躍しています。
『Closer』『VERA』『第一容疑者』『New Tricks』。
フランシスの物語の中では、女性はあくまでも守護される立場のみなので、そこがちょっぴり物足りないかな・・・と思います。

でも、「一文も読み落とせない」ほどではありませんが、この先どうなるのかが気になって読みすすめていくことが出来る本でした。


フェリックス・フランシス、頑張ってください!



Over Turn Race Horse Photo by Paul https://www.flickr.com/photos/vegaseddie/

2015年1月11日日曜日

『ナイトメア ~血塗られた秘密』 Penny Dreadful  3月からの新番組 エピソード1放送!



『ナイトメア ~血塗られた秘密』、"Penny Dreadful" のエピソード1がwowowにて放送されました。




3月放送スタートのドラマなので、超先取りのお試し放送です。
『ナイトシフト 真夜中の救命医』の続きでぼんやり見ていたら、とっても面白いドラマで目が覚めました!
(『ナイトシフト』は気恥ずかしいぐらいの型にはまった医療ドラマ。主人公がアフガニスタン帰りという点は新しいです・・・)






















BBCの制作だと信じ込んでいたら、MADE IN USA でビックリ。
画面の暗さ(ロウソクやオイルランプの灯りだけでの生活が彷彿とされます)、セリフでなく行動でみせる進行状況、ヴィクトリア時代のダークな雰囲気そのまま。











【エピソード1】
"切り裂きジャック"が跳梁跋扈していた時代、ついでに言うとシャーロック・ホームズが活躍していた時代("緋色の研究"が1881年)のロンドンでは怪奇現象が相次いでいた。
アメリカ出身の曲芸撃ちのガンマン、チャンドラー(J.ハートネット) はミステリアスな美女ヴァネッサマルコム卿からある夜の仕事を依頼される。
真夜中に向かった先に待っていたものは、異様な姿の生き物。彼らはヴァンパイアの巣に踏み込んでいたのだ。
マルコム卿が殺したヴァンパイアの一体を解剖すると、甲羅を伸ばしたような皮膚の下にはヒエログリフの文字が描かれており、出典はエジプトの"死者の本"からであることが確認されたが、結局、探していたマルコム卿の娘は見つからず、次の興行先のパリへと向かうはずのチャンドラーだったが・・・。




画面左下がヒエログリフ





チャンドラー。ジョシュ・ハートネットです。女性にもてる明るい瞳のガンマンですが、名家の出身で暗い秘密を抱えていそうです。
ハリウッドから遠ざかっていたらしいのですが、存在感があります。
ただのイケメンではない。






ミステリアスで危険な美女、ヴァネッサ。
鋭い観察力を持っています。
エヴァ・グリーンです。






消えた娘を探すマルコム卿。
アフリカを探検していた有名な探検家。過去の過ちを正すことになる。
ティモシー・ダルトン。貴族のオーラがあります。








外科医のヴィクター・フランケンシュタイン。
ハリー・トレダウェイ。
マルコム卿たちが殺した異世界の怪物を解剖したあと、ついうっかり?フランケンシュタインを作ってしまったようです・・・。







ブローナ・クロフト。貧しいアイルランド人で、辛い過去から逃れてきた女性。エピソード2から出演。
イーサン・チャンドラーと絡んでいきます♡  ブローナはゲール語で"悲しみ"という意味。
『ドクター・フー』でデイヴィッド・テナントのコンパニオンをしていたローズ役のビリー・パイパーです!
こんなところで会えるなんて感激。








ドリアン・グレイ。死ねない耽美な人。途方もなく裕福だそうです。こちらもエピソード2から出演。
リーブ・カーニー。
美しい。








フランケンシュタイン、ドリアン・グレイ、ヴァンパイアと戦うヴァン・ヘルシングなどが盛りだくさんに詰め込まれていくらしい、ワクワクするファンタスティック・ホラー。
落ち着いたドラマなので、3月からの放送がとても楽しみです。
何やら税金の関係で、ロンドンではなくダブリンで撮影しているそうです。



ALL PHOTOS BY PENNY DREADFUL FACEBOOK

『禁忌』 フェルディナント・フォン・シーラッハ ~"TABU" Ferudinanndo von Schirach


フェルディナント・フォン・シーラッハの新刊、『禁忌』 ~"TABU"











問答無用ですぐに手にとり、購入するのがフェルディナント・フォン・シーラッハ。
そしてこの『禁忌』は、「法廷劇」や「謎解き」だけではなく完全に"文学"な作品です。
静かに語られていく主人公のゼバスティアン・フォン・エッシュブルクの半生が物語の半分を占め、後半にガラリと雰囲気を変えエッシュブルクが殺人罪で起訴され、裁判へと持ち込まれていく過程が描かれています。



エッシュブルクは落ちぶれた旧家の出身であり、プロの芸術的な写真家として活躍するかなり風変りな男性。
万物に人が知覚する以上の色彩を認識し、全てを人と違った目線でとらえています。
子供のころ父親が猟銃で自殺し、住んでいた古い屋敷を母親は売り払ってしまいます。エッシュブルク自身は寄宿学校で暮らしてきたので、完全に確立された自分自身の世界を持ち、再婚して別に暮らしている母親とは疎遠な生活をおくっています。

ある時、若い女性の声で助けを求める緊急電話が入り、捜査の結果、彼女は車のトランクに閉じ込められて殺害されたのだと断定され、エッシュブルクが状況証拠により逮捕されます。

ここで問題なのが「被害者の不在」。
被害者の死体が見つかっていないのに、殺人が起こったと断定できるのか?
です。

事件の弁護は有名弁護士のビーグラーに任されますが、ビーグラーが謎解きをするわけではありません。どちらかというと、本人のビーグラーも認めているように"使い走り"をさせられています。

エッシュブルクは「有罪」か「無罪」かが争点なのですが、このお話は有罪や無罪という観点からは全く離れ、『芸術』を語っていると言えるのではないでしょうか?

そしてエッシュブルクの作品が"インスタレーション ~Installation art" (展示空間全体を使った3次元的表現。空間全体が作品) という言葉で表現されていますが、一言でいうと、この事件全体が世間全体を使ったインスタレーション。
ミステリーではなく、芸術表現なのです。


シーラッハの描く人物は、誰も彼も際立っていて、風変りな一面を持っていたり、規則正しくて忍耐強かったり、何かにのめり込んでいたりと様々です。
人間はそのままの、有りのままの自分でいい。そんな気がします。






Bokeh in Red Photo by Stanly Zimney https://www.flickr.com/photos/stanzim/



"うらを見せおもてを見せて散るもみぢ"
という日本の僧侶、良寛(1758-1831) が死の床で遺した句を「わたしにとって、とても重要な句です」とシーラッハは"日本の読者のみなさんへ"という挨拶のなかで紹介しています。

ひらひらと表も裏も見せて散っていく"もみじ"は死にゆく良寛自身。
自分の裏も表も何もかも隠さずに見せた相手は、介抱してくれていた貞心尼(40才年下です)だそうです。(何もかも見せられてしまうと、疲れてしまう気もしますが。)

こうして、もしかして日本人以上に日本の文化を理解し、取り入れてくれているシーラッハですが、今回の『禁忌』のなかでも、日本のサムライがかつて「自分はもう死んでいる」という言葉とともに起床するのが日課だったという引用があります。
今よりももっと『死』が日常であった時の覚悟です。