Horse Racing photo by Paul https://www.flickr.com/photos/vegaseddie/ |
日本で"競馬" といったら、競馬新聞片手にオジサン連中が一喜一憂しているギャンブル…というイメージしか湧かないのですが、UKでは違います。確かにギャンブルですが、もっとスポーツに近いもの。
ディック・フランシスの"競馬シリーズ" ミステリーは、私にとってシャーロック・ホームズやアガサ・クリスティを読み終えた後にたどり着いた最初の海外ミステリー。
コナン・ドイルやクリスティはミステリーの教科書的存在なので、その先のステップをなぜディック・フランシスに踏み出したのかは「?」なんですが(たぶん凄く流行っていたのだと思います)、『大穴』『興奮』『利き腕』などなど、夢中になって読んでいました。
けれどもディック・フランシスの高齢化に伴い、物語の勢いがなくなっていき、最近まではご無沙汰していました。フランシスの息子さんとの共著が出版されているのは知っていたのですが、過去の作品の良さを知っているからこそ、手が出ませんでした。
そして2012年にディック・フランシスが亡くなり、(R.I.P.)、その後に次男のフェリックス・フランシスが出した"新・競馬シリーズ"、『強襲』 ~GAMBLE です。
本屋で見かけて、訳者の後書きに「本書が売れてくれれば、この"新・競馬シリーズ"が続けて翻訳されることもあり得るだろう」と書かれていたので、応援の意味を込めて購入しました。
・・・「翻訳ミステリーを取り巻く状況は厳しいので・・・」とも書かれてあり、そういえば最近海外ミステリーの棚が狭くなっているので、海外ミステリーファンとしてはちょっぴり危機感を感じます・・・
内容はまさにディック・フランシス風をそのまま踏襲した文体で、主人公はストイックな元競馬騎手であるファイナンシャル・アドバイザーのニコラス・フォクストン。
グランドナショナル観戦中の彼の真横で同僚が射殺される。
フォクストンはこの同僚のインターネット・ギャンブルの借金返済に遺言執行者として頭を悩ませつつ、顧客の陸軍大佐から投資先のブルガリア土地開発の詐欺に関する相談を持ち込まれて調査していくうちに、さまざまな事件に巻き込まれていき、恋人や母親とともに暗殺者に命を狙われてしまう・・・というストーリーです。
同棲中の恋人の心変わりを疑ったり、年上の魅力的な調教師の女性から誘惑されたりとロマンスの方面でも頑張っています。
これはパスティーシュではなく、フランシス家の「ファミリー・ビジネス」。
なので、どこも変える必要はないのですが、どこまでもストイックに押しまくる主人公だけでなく、例えば個性豊かな女性警察官、検察官、検視医等々・・・を登場させればもっとひねりが加わっていいかもしれません。
最近のミステリー・ドラマでは強烈な個性の女性刑事が活躍しています。
『Closer』『VERA』『第一容疑者』『New Tricks』。
フランシスの物語の中では、女性はあくまでも守護される立場のみなので、そこがちょっぴり物足りないかな・・・と思います。
でも、「一文も読み落とせない」ほどではありませんが、この先どうなるのかが気になって読みすすめていくことが出来る本でした。
フェリックス・フランシス、頑張ってください!
Over Turn Race Horse Photo by Paul https://www.flickr.com/photos/vegaseddie/ |