ベネデイクト・カンバーバッチ主演の話題作、『イミテーション・ゲーム』 ~Imitation Game
Photo by 『イミテーション・ゲーム』 face book |
ドイツの電気機械式暗号機、「エニグマ」の暗号を解読せよ!が主軸のストーリーではなく、あくまでも数学者アラン・チューリングの人となり、内面を描いている映画です。
アラン・チューリングはケンブリッジ大学の数学者で、ロンドン北部のブレッチリーパーク「政府暗号センター」(Government code and Cypher school)にて「bombe」と呼ばれる暗号解読機を制作、総当たり攻撃によりエニグマの暗号解読に成功します。
実際は、暗号解読には開戦前にポーランド軍の暗号解読機関から受け取った旧式のエニグマのレプリカや資料(解読方法も含む)をもとに仕組みを解析したそうですが、その辺には(詳しくなりすぎるためなのか?)触れられていません。
解読もチューリング博士だけでなく、他に多くの優秀な数学者たちが関わっていますが、そちらも省略(あくまでも主役はチューリング博士です)。
暗号解読の詳細を語る映画ではなく、人間、アラン・チューリングの描写が主軸となっており、もちろん社会性のない天才をやらせたらベネデイクト・カンバーバッチは抜きん出ているのですが、如何せん、(『シャーロック』のファンなので)社会性のない天才=シャーロックの役柄にどうしても結びつけてしまい、困ります。
シャーロックほどには傲慢な部分はないのですが、誰にも理解しがたい天才の鋭い部分を強調したらシャーロックになってしまう・・・。ので、やりにくいところもあったのではという印象を受けました。
そして、下記のような数々の特異なエピソードを持つアラン・チューリングの変人ぶりや優秀さをもっと強烈に表現してほしかった気がします。
✿チューリングは長距離走が得意だったらしく、会議に出席するために、ブレッチリーパークからロンドンまでの64kmの距離を走ったことがある。(⇒ランニングしているシーンは挿入されていたが、何かを忘れるためにがむしゃらに走っているように見えました)
✿花粉症のため、自転車に乗る際にはガスマスクを装着していた。(⇒当時のロンドンでは、防毒マスクをしゃれたバッグにいれて持ち歩いている女性たちがいたそうなので、マスクの所持はごく普通のことのようです)
✿マグカップの盗難を防ぐため、ラジエーターに鎖で繋いでいた。
ホモセクシャルであることは、彼の死に係わる重要な要素ですが、その辺りはパブリックスクール時代のエピソードで切なく描かれています。少年時代のアラン・チューリング役の演技は素晴らしく、ベネデイクト・カンバーバッチ以上に"アラン・チューリング"を感じました。
Photo by Karsten Sperling http://spiff.de/photo |
世間の評価はかなり高く、映画評などでも☆☆☆☆☆が5個並んでいます。
そして2003年の映画 『エニグマ』 ~ENIGMA
もっとエニグマを楽しみたい方にお薦めなのが、ケイト・ウインスレット出演、マシュー・マクファディンが海軍の情報将校役で出演している『エニグマ』です。
恋人のクレアにふられて精神を病んだケンブリッジ大学の数学者トム・ジェリコがブレッチリーパークの仕事に復帰する。
しかし、クレアは謎の失踪をとげ、彼女の部屋から受信された暗号文を発見したジェリコは、彼女がドイツのスパイなのではないかと疑う。
クレアのルームメイトだったヘスター(ケイト・ウインスレット)の協力を得て、ジェリコはクレアの行方と彼女の真実の姿を探り出そうとする。
同時にジェリコは北大西洋上の味方の船団をUボートの攻撃から救うため、「シャーク」というエニグマ暗号機をより発展させた暗号機の暗号を解読する任務を与えられる。
気象暗号をもとに前回は解読したが、2日前にドイツは気象暗号を変更してしまっていたことから、ブレッチリーパーク内にドイツのスパイがいると推測された。
この暗号を解読するためには、船団の船が発見され、ドイツが無線でその位置や速度を通信し、その通信の暗号受信してをひとつずつ解読していくしかなく、連合軍側の船の犠牲を意味することでもあった。
一方、クレアが隠していた暗号をエニグマ機で解読すると、ポーランド人の名前が連なった名簿であることが判明し、映画の冒頭にソ連のカティンの森で発見された4000体の死体の山へと謎はつながっていく・・・。
暗号コードの謎、美しい女性の失踪の謎を織り交ぜたエンターテイメント性の高い、サスペンス映画です。ブレッチリーパークの雰囲気はこちらの映画の方がわかりやすいかも。
ケイト・ウインスレットはメガネ女子、マシュー・マクファディンは隻眼の情報将校でカッコいい!
2003年頃のマシュー・マクファディン
制作に係わったミック・ジャガーとケイト・ウインスレット
スパイ小説 『針の眼』 ~ EYE OF THE NEEDLE ケン・フォレット著
『イミテーション・ゲーム』、『エニグマ』を観たら、更に第二次世界大戦当時の雰囲気を存分に味わえる、連合軍のノルマンディー上陸作戦に絡むスパイ・サスペンスもの、『針の眼』を思い出しました。
ケン・フォレットの出世作である『針の眼』はドナルド・サザーランド主演で映画にもなっています。
スリーパー・エージェントとしてイギリスに潜んでいたヒトラーの信望も厚いドイツのスパイであるヘンリーが、連合国軍のフランス、カレーへの上陸作戦が欺瞞であることを見破り、本国へ情報を届けるためにたどり着いた北海の孤島で、車椅子生活を送る夫と心が通わなくなっていたルーシーという魅力的な女性に出会い、運命が大きく変転してしまう・・・というストーリー。
スパイものは複雑に入り組んでいる作品が多いのですが、この『針の眼』は読みやすく、スパイものが好きならお薦めです!
✿ルーシーの若き夫、自動車事故で肢体不自由となったケンブリッジ大学出身の元英国空軍のパイロット、デービッドは睫毛が長くキレイな目もとをしており、男装の女性に見紛うばかり・・・とあるので、エディ・レッドメインEddie Redmayne をイメージしてしまいます。
エディ・レッドメイン 2014年12月 "女性に見紛うばかり・・・"