舞台はヴェネツィア。
第1作は『カルヴィニア 1 禁忌』 THE ABOMINATION
第2作は『カルヴィニア 2 誘拐』 THE ABDUPTION
作者はオックスフォード卒の広告会社クリエイターであるジョナサン・ホルト ~JONATHAN HOLT
登場人物はイタリア憲兵隊刑事部大尉 カテリーナ・ターポ
同じく イタリア憲兵隊刑事部大佐 アルド・ピオーラ
イタリア駐留米軍少尉 ホリー・ボランド
ソーシャルネットワークメディア〈カルヴィニア〉の創設者 ダニエーレ・バルボ
元CIAヴェネツィア支局長 イアン・ギルロイ
カルヴィニアとは、ヴェネツィアの街を細部まで緻密に再現した3Dのミラーワールドであり、ユーザーは高い匿名性が確保され、インターネット・ストーキングと同じ手法で他のサイトに匿名のメッセージを残したり、暗号化したメッセージを送ることもできる。
(濃密で複雑なお話なので、まずは登場人物のイメージを中心にご紹介)
カテリーナ・ターボ 憲兵隊刑事部大尉
カテリーナは第1作でピオーラ大佐との不倫関係解消後、第2作の始めでは殺人事件の捜査から外れ、ヴァレンティノのデザインの洒落た憲兵隊の制服を着ているのが屈辱。不倫相手のピオーラ大佐に捜査のコンビを解消されたため、セクハラで訴えをおこし、女性更衣室のロッカーには「売女、とっとと失せろ」と落書きされ、なかに犬の糞が入っていたり、鍵穴に小便をかけられる嫌がらせを受けるはめに。
が、本人は堂々としたもので、カルヴィニアで既婚女性のふりをしてあとくされのない情事の相手をさがしてエンジョイ、ホリー・ボランドとの関係を利用して殺人事件の捜査にうまく復帰。
第2作では、ハッカーによって情事の相手に撮影された裸の写真をネットにばらまかれ、拡散してしまったものの、本人はあわてず騒がず。事件解決後には、「あれはきみの写真じゃないと言うやつもいたんだ。きみは部署で一番でかいタマを持っているはずだが、写真の女にはそれがない」と称賛される。
〈カテリーナ・ターボ大尉はイタリアの至宝、モニカ・ベルッチのような美女のはず。この眼力はカテリーナそのものです。
カテリーナはまだまだ駆け出しという設定なので、ちょっとお若い時のベルッチさんで!〉
イタリアとアメリカの2重国籍を持つ(実は第2作ではこの点が重要な要素となってきます)
ホリー・ボランド 米軍少尉
第1作では優秀な頭脳を駆使してカテリーナとともにクロアチアから脱出、敵もうまく片づけます。セクハラしてくる同僚は膝蹴りで対処、脅しをかけるために人身売買業者のペニスを引っ張り出し(!)カテリーナとふたりで切り落とすごむのもいとわない冷静さと大胆さをあわせ持つ。
第2作では、敵?の魔の手に落ちて酷い拷問を受ける。
カルヴィニアの創設者ダニエーレといい感じになるものの、本人はレズビアンなため苦悩中。(ややこしい・・・)
〈ホリー・ボランドはジェシカ・チャステイン。
この押しの強くなさげでand芯の強い軍人魂を感じるのがピッタリ!〉
このピオーラ大佐は仕事のできる切れ者。しかしキレイな足の野心的な部下カテリーナ・ターボの魅力にころりと参り、すぐに不倫の関係にもつれ込みますが、2人の現場の写真を撮影され(CIAの陰謀?)、慌てふためいて愛してると宣言していたカテリーナとの関係をあっさり解消。「あれは無分別で不適切で軽率な行動だったんだ」と冷酷に言い放ち、「罠にはまったおれがばかだった」とのたまいます。
第1作では切れ者の片鱗も見えなかったのですが、(カテリーナとの情事に溺れていただけ)、2作目では不倫騒動の余波で妻とは家庭内別居のような扱いを受けつつ、事件ではそこそこな活躍を見せます。
〈ピオーラ大佐はBBCのドラマ『ローマ警察殺人課アウレリオ・ゼン』よりZen役のルーファス・シーウェル Rufus Sewell がイメージそのもの。
優柔不断なような、それでいて決めるときは決めそうな雰囲気が出ています。〉
カルヴィニアの創設者、ダニエーレ・バルボ。
名門のバルボ家に生まれるが、6歳のときに誘拐され、両耳と鼻を切り落とされる。
10代のころからハッキングにかかわり、自閉ぎみ。
"Tシャツとチノパン姿、肩まで伸びた髪が耳を覆い隠し、鼻があるはずのところはたいらで、皮膚が引きつって、へそのように渦を巻いている。" なかなか複雑な人。
〈ダニエーレ・バルボは同じ名前のダニエーレ・ファヴッィリさんでしょうか。 Daniele Favilli〉
元CIAヴェネツィア支局長でホリーの心の師となるイアン・ギルロイ。
ダニエーレ・バルボが幼いころ誘拐された事件の捜査にも係わっていた。
ホリー・ボランドを助けているうちに、父娘のような絆が生まれる。
〈イアン・ギルロイ元局長はキーファー・サザーランド。
元とかいってますが、今でも十分現役で、色々と画策し実行している人物。〉
Ⅰ 禁忌 THE ABOMINATION
"Canal Grande Chiesa della Salute e Dogana dal ponte dell Accademia" by This Photo was taken by Wolfgang Moroder. Feel free to use my photos, but please mention me as the author and send me a message. - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
イタリアのミステリードラマでもお馴染みなように、イタリアには警察がいくつもありますが、歴史的にカラヴィニエリが一番古く、規模も大きいそうです。カテリーナ達が所属するのもカラヴィニエリ。
カラヴィニエリのパトカー アルファロメオ カッコいいです♪
"Alfa-Romeo159-Carabinieri-di-Roma" di Rundvald - Rundvald. Con licenza Public domain tramite Wikimedia Commons.
フィレンツェのカラヴィニエリ
"Firenze.Carabinieri01". Con licenza CC BY-SA 3.0 tramite Wikimedia Commons.
カラヴィニエリの制帽 カテリーナも着用
"Berretto Carabinieri". Tramite Wikipedia.
普段はこんな感じ? カテリーナはスカート姿
お話は司祭の格好をした女性の死体が発見されたことから始まる。
その女性の連れの女性もなぜか射殺され、カルヴィニアの創設者ダニエーレからの情報提供により、事件は旧ユーゴで行われたレイプ・キャンプへと繋がっていく。ソラヤという女性が自分を強姦した男のひとりはクロアチア軍のアドバイザーのアメリカ人だと証言。
憲兵隊カラヴィニエリの女性大尉カテリーナと米軍少尉ホリーは、ソラヤの供述書とレイプによって生まれた娘のメリナを確保するためにクロアチアへ向かうが、クロアチア軍の演習に巻き込まれた事故に偽装されたふたりの暗殺が計画され、爆撃を受ける・・・。
このクロアチアでの逃避行の立役者はホリー。
軍人ならではのテクニックで逃げ切り、冷酷に敵を排除します。
第1作の主役は完全にカテリーナとホリー。ピオーラ大佐も最後にチラリと協力しますが、とにかく女性への犯罪を女性がプロフェッショナルに解決。
クロアチアの風景。たぶん、こんな山や林や野の中を逃避行。
美しいクロアチアの街
Ⅱ 誘拐 THE ABDUCTION
米軍少佐の娘ミアがよりにもよって、スワッピング・パーティの場で誘拐された。
誘拐犯の目的は何なのか?なぜならイタリアでは身代金の支払いをすると罰せられる誘拐対策法が存在する。これは、『ローマ警察殺人課アウレリオ・ゼン』のエピソードにもあるが、誘拐産業を成り立たせない目的のため。(イタリアはマフィアでも有名です)
誘拐犯はカルヴィニアを通してメッセージを送り付け、CIAの強化尋問(拷問ではないという)"拷問メモ"➡グアンタナモ基地でテロリストの尋問に実際に使用されている尋問方法の手法により、痛めつけられるミアの映像が公開される。犯人は政治的な意図をもってアメリカの軍人の娘を誘拐したらしいことが判明する。
ダニエーレの協力により誘拐犯の居場所を突き止め、ふたりの誘拐犯は射殺されるのだが、犯人の死体が2体のみだということにカテリーナとホリーは疑問を持つ。なぜなら、誘拐の折に監視ビデオ映像に映っている犯人像と異なるからだ。
残る犯人を追いつめようとして、逆に囚われの身になり、拷問を受けるホリー。
行方不明になったホリーを懸命に探すカテリーナ。
ホリーはとんでもない相手に囚われ、強化訊問にさらされていた・・・。
誘拐されたミアは、スワッピングパーティに飛び込んでいく(見学のみ)軍人の娘という立場におさまらない反骨精神の持ち主。ストックホルム症候群や、リマ症候群(犯人が人質に感化され、傷付けずに解放した日本大使公邸占拠事件による)を思い出して、拷問する犯人の立場を理解して勇敢に立ち向かう16歳。
このシリーズに出てくる女性たちは、とにかく骨のある女性ばかりで、1,2巻とも女性の活躍が中心で、物語の視点もほぼ女性からになります。しかも、作者のホルトは踏ん切りのいい勇ましい精神をもつ女性を描いているのでとても爽快♪
この物語の女性たちはウジウジなんて全くしない。
恋愛や仕事がうまく立ち行かなくなっても、さっさとmove on!していくのです。男性陣はあくまでも助演です。
対する男性陣、ピオーラ大佐は事件の解決に奔走、同時に米軍基地で発見された人骨の謎にも挑むのですが、カテリーナと再び一緒に捜査していることを妻に正直に告げ、家から追い出されてホテル暮らしになります。物語の最後にカテリーナに愛を告げますが、愛よりピオーラ大佐とは殺人事件の捜査で頑張りたいカテリーナに軽くNOと返されるはめに。
(そもそも大佐は何度も不倫歴のある既婚者で、前作で妻にばれたときの対処がカテリーナに酷過ぎました)
一方、カルヴィニアの創設者ダニエーレは、事件を通してカテリーナやホリーと交流し、誘拐のトラウマによって自閉してきた心がだんだんと開いていき、新たな人生が開いてきます。
次回第3作で人間関係、恋愛関係がどう変化していくのかは不明ですが、女性陣にはこの潔さをどこまでも保ち、クールに突っ走ってもらいたいと思います。
アメリカ陸軍のLegion pin
photo by https://www.flickr.com/photos/pvera/
ホリーもこんなユニフォーム姿なはずです
photo by https://www.flickr.com/photos/dvids/
ベネツィアのゴンドラ
ロマンチックな夜のベネツィア