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2014年10月16日木曜日

どこか懐かしい 『HANNIBAL』 ハンニバル! Season1 第1~7話




『HANNIBAL』

アメリカNBCの制作、原作は『羊たちの沈黙』のトマス・ハリス。お話は『羊たちの沈黙』の前日譚である『レッド・ドラゴン』のキャラクターがベースです。











『羊たちの沈黙』は、サイコパス・シリアル・キラーの金字塔といえる象徴的でクラシックな作品。
小説も映画も衝撃的で、この作品以降に類似するものが続々と登場しています。
〈FBI行動分析課〉の存在を知ったのもこのトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』シリーズから。(FBIが死体農場を持っていて、死体の変化・・・腐り方などを独自に研究していることまで知ってしまいました)

で、懐かしいトマス・ハリスのHANNNIBALが1988年から25年ぶりに帰ってきましたが、全く色褪せていないどころかまったりと濃厚で見応えのあるドラマになっています。

ウィル・グレアムというキャラクターは『レッド・ドラゴン』に登場する異常犯罪専門捜査家で、ドラマでは独身男性という設定ですが、原作では家庭を持っていてすでにFBIを離れています。ハンニバルを殺人鬼と見破り逮捕しましたが、それまで全くハンニバルとは接点がなく、この点がドラマとは大きく違いますが、ドラマ『HANNIBAL』には『レッド・ドラゴン』から多くのエピソードが引用されています。




主演のハンニバルはデンマークの俳優マッツ・ミケルセン。独特な風貌でイケメンなのか否かは問題じゃないような気がしますが、「彼ってハンサム!」という熱狂的なコメントもあるのでハンサムだと思います。
ウィル・グレアム役のヒュー・ダンシーは英国俳優。主役の2人が外国人でアメリカのドラマを制作するって面白いですね。思えばHBOのドラマ『Game Of Thrones』の俳優陣も英国俳優が多いですし、ドラマの世界観を大切にしている点が最近のドラマが映画より面白い理由の一部かもしれません。思えば、アンソニー・ホプキンスも英国俳優でした。











ごく普通の精神科医のような顔でウィルと出会うハンニバルですが、普通の状態ですでに怖い!
ドラマのなかで次々と披露される彼の手料理も素材を考えるととっても危険!
第1話で若い女性ばかりが狙われる事件が発生しますが、生きたまま肺を切り取られるという模倣犯の起こした事件も発生。これはハンニバルが楽しんで料理の素材を得た殺人なのが明らかで、肺を手際よくさばいていく過程も「この肺のレプリカはどうやって作ったんだろう?もしくは他の動物の肺?」と思いながら見てしまいました。






出会い
第1話の「Aperitif アペリティフ」は、犯人に共感し、犯人そのものになって事件の再現や動機を解明できる能力を持つFBIアカデミーの教官であるウィル・グレアムが、FBI行動分析課のジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)からミネソタ州で起きた若い女性たちの失踪事件解決に手を貸すように依頼されることから始まります。
精神的に不安定なウィルのために、ジャックは精神科医のハンニバル・レクター博士をサポートにつけるのですが、実はハンニバル・レクター博士自身が最強で最悪なシリアル・キラー。
ミネソタ州の若い女性ばかりを狙った殺人鬼に逮捕直前に電話をかけ、逮捕を予告して犯人に妻を殺すきっかけを与えます。
その時にウィルは犯人を射殺し、犯人の娘を助けるのですが、この犯人殺害の記憶にウィルは悩まされていくことになります。



ちょっぴり不満な点
第2話では人間をキノコ栽培の肥料にして畑に植える犯人が出現するのですが、なぜか事件の細部が(どうやって植えていったの?とか)あまり解明されません。あれだけの人間を並べて土をかぶせるのも一苦労だと思うのですが。スリラーを数々観てきたなかでも、結構ビックリしたのでもう少し犯人像を解明してほしかったです。





  美味しいキノコ栽培に殺人が必要・・・






そのかわり、第1話で父親に殺されかけた少女が昏睡状態を脱して、ハンニバルと絆を結んでいきます。この少女のお話が割と引っ張られていて、他の殺人事件の影が薄れてテンポも緩やかになり、「すこし退屈かも・・・」と思っていたら途中からサイコ・ホラーっぽさが復活。






 弟子にする予定?








しかし第4話の「Oeuf ウフ」は、ボストン爆弾事件の直後だったため、不適切なためアメリカでは放映されなかったそうです。失踪した子供たちがある女に洗脳され、自分たちの家族を皆殺しにしていくという事件なのですが、家族の絆が試されるときだったからでしょうか?
この事件も"どう洗脳していったのか?""どこから資金源を得て大人数で暮らしていたの?"などの疑問が解明されないまま終わりましたが、全体の流れにはあまり係わらない事件なので、アメリカの視聴者が見られなくても問題はないかも。



           第1話の殺人に絡んだヘラジカ(Moose)がメタファーとして度々登場






印象に残った事件は、脳腫瘍ができた男が凶悪事件の犯人を襲い、背中の皮膚?を切り開いて天使の形にして殺害する第5話の事件「Coquilles  コキーユ」です。
この事件の犯人は自らを天使のように天井から吊りさげる形にして自殺。
"どうやって自分の背中の皮膚を切り開いて羽根の形にして天井から釣り下がったの?"(すごく難しそうな体勢です)を説明して欲しかったのですが、やはりなんの説明もなくスルー。



                                                     これは第2の犠牲者ですが、犯人も こんな風に
                    自分で吊り下がって自殺。かなり難しそう☆





実はこの殺害方法は、小説『HANNIBAL』に出てくる"ブラディー・イーグル(血まみれの鷲)"という方法なのかもしれないと思っています。
古代ノルウェイの生贄の風習。背中の短い肋骨を切除して両側の肺を取り出し、翼のように広げる。
というものなのですが、これだと自殺は無理ですから・・・。ドラマでなにかしら言及していたかもしれませんが、見逃してしまったかも?



これです↓ ホントにBloody




物語のメインはウィルとハンニバル
けれども数々起こる殺人事件が中心ではなく、ウィルとハンニバルの人間模様が中心のドラマだと思えば、事件の細部は端折ってもOK!なのでしょう。

ハンニバルは淡々と人殺しをする一方で(食材と楽しみのため?)、もしかして精神的にウィルを追いつめていく展開なのか?と予想していたのですが、意に反して今のところウィルを追い詰めているのは心理分析課指揮官のジャック。
事件に悩まされて悪夢を見て夢遊病になっているウィルをこき使い、「心理分析官なんだから、自分で分析しろ!」とウィルにいわれて切れるジャックですが、ウィルの言う通りですよね・・・?ジャックの心理分析する姿をまだ見ていないのですが、そこはどうなっているのでしょう・・・。
ジャックの奥さまも末期の癌に侵されているのに、心の内を見せないため苦悩するジャックはハンニバルに身の上相談し、頻繁にハンニバルの手料理をごちそうになっていて後々後悔しそうです。



            ハンニバル邸に入り浸るジャック。奥様も精神分析に通う。
            ローレンス・フィッシュバーンは、CSIの時より楽しそう。






Chesapeake Ripperはだれ?
FBIは"チェサピークの切り裂き魔"の追跡に全力を注いでいますが、いまや身内となったハンニバルの正体にいつ、だれが気づいてしまうのかがポイントになってきそうです。
そして、過去にチェサピークの切り裂き魔に優秀なFBI訓練生のミリアム・ラスを殺されたジャック。訓練生といえば、『羊たちの沈黙』でハンニバル・レクター博士がこだわっていたクラリスも訓練生。このあたりはジャックのトラウマとなっていきます。


ドラマ全体が重々しい空気に包まれて進行していき、映画版とはまた違う味わいがあります。
そしてアンソニー・ホプキンスのハンニバル・レクター博士は最高傑作ですが、マッツ・ミケルセンの時代がやってきたようです。エプロン姿もセクシーです。





 ウィルの家族は捨て犬たち。捜査で忙しいときは、ハンニバルに世話を頼んだりもします。



   きっと、どういう包丁さばきがいいか検討しているところでしょう。肺です。






 ハンニバル被害者の会


エピソードのタイトル
ドラマはカナダのオンタリオ州トロントで撮影され、第1シーズンのエピソード名はフランス料理から、第2シーズンの各エピソードのタイトルは日本の懐石料理から引用されています。



All photos by HANNIBAL Facebook




後半戦はこちらから⇊